Saltburn

第67回ロンドン映画祭開幕映画

映画祭プレス試写に出られず、映画祭一般上映プレスチケットも取れず、ふつうに公開されてから観た。

オープニングを飾るにふさわしい驚きと華やかさがある映画。ブラックな笑いあり、サスペンスありで、最後まで楽しませる。大富豪の息子と、そうではない家の息子の愛憎が描かれるあたり、リプリーのイギリス版とも呼べそうだが、前作Promising Young Woman同様、エメラルド・フェネル監督は最後に種明かし=どんでん返しを仕掛けている。

主演のバリー・コーガンがまさに体を張った演技。昨年のBAFTA会見では助演男優賞受賞でお目見えしたが、今年は主演で見られるかな。

公式サイトhttps://www.saltburnmovie.net/

“ストーンズの女”アニタ・パレンバーグ

第67回ロンドン映画祭 オンライン試写

アニタ・パレンバーグのドキュメンタリー。オリジナルタイトルCatching the Fire: The Story of Anita PallenbergAnitaに変更されたらしい。

当初ブライアン・ジョーンズの恋人だったのが、キース・リチャーズに鞍替え、ミック・ジャガーにもちょっかい出されたりしながら、キースとの間に子を設けるも、後に別れる。

以前、ブライアンを主人公にしたドキュメンタリーを観た際には、ひどい女のように思ったが、こちらでは魅力的な女性と思える。曲、ファッション、イメージと、ローリーング・ストーンズのかなりの部分に影響を与えた女性のようだ。

結果的に相手にされなかったミックが作ったのがYou Can’t Always Get What You Want。邦題は無情の世界だが、欲しいものがいつも手に入るわけじゃないと直訳すると、ミックの心情そのまんま、アーティストって辛さも作品にできていいなあ。

公式サイトhttps://skglobalentertainment.com/unscripted/catching-fire/

That They May Face the Rising Sun

第67回ロンドン映画祭 オンライン試写

アイルランドの作家ジョン・マクガハンの同名小説映画化。

ロンドンからアイルランドの片田舎に移り住んだ中年夫婦の暮らしを描く。お互いに行き来しあう村人もいれば、声をかけあう顔見知りもいる、地域コミュニティーでの生活だ。

年配者が多いが、その中でも結婚する人たちもいれば、亡くなっていく人もいる。悲喜こもごもが、ゆっくり、じんわり描かれる。

タイトルは、仲間の埋葬時、頭の向きはこちらと指示した村人が言う言葉。「それで登ってくるお日様に向ける」、死者に朝日が拝めるとは思えないが、その向きで埋葬するのが沁みる。

日本では湖畔というタイトルの訳本が出ているようだ。

公式サイトhttps://www.breakoutpictures.com/movie/that-they-may-face-the-rising-sun-2022

The Nature of Love

第67回ロンドン映画祭 オンライン試写

裕福で知的な既婚女性と肉体労働青年の恋。

最初の出会いから一瞬で燃え上がった2人、女性は全てを捨てて、恋に生きる。

だが、性的な相性は抜群らしい2人には、他の共通項が一切ない。話も合わなければ、暮らし方も興味も別。という一部始終が、テンポよく面白く展開していき、飽きさせない。

コメディータッチなので、ラブコメと呼んでいいのかもしれないけど、辛辣。愛の本質と訳せるタイトルからいくと、愛の本質は一時の気の迷いと言ってるようなもの。確かにその通りかもしれないが。

公式サイトhttps://mk2films.com/en/film/the-nature-of-love/

ロボット・ドリームズ

第67回ロンドン映画祭

10月15日 パブロ・ベルヘル監督登壇

犬とロボットのアニメーション映画。

犬と言っても、擬人化され二本足で歩く。その犬の家に来る、宅配便の配達員は牛という具合なので、人間が動物のキャラになっているふう。

配達員が運んできたのは、ロボットの組み立てキット。孤独だった犬は、組み立てたロボットといつでもいっしょ、あちこち出かける明るい日々となるが、あることから離れ離れになってしまう。彼らが再び出会うことはあるのか…

離れ離れになった後、お互いを思いあう犬とロボット、大人であれば失った恋を思うところだ。子ども向けのようで、実は奥が深い。

上映後、Q&Aに登壇したベルヘル監督は、犬とロボットが楽しく踊った思い出の曲、かつ映画のテーマとも重なるアース・ウィンド・アンド・ファイアーのセプテンバーを、♫Do You Remenber♪と歌っていたが、過去の思い出の話をしかけて、涙ぐみ、話せなくなってしまった。そんな思いもたくされた映画のようだ。

公式サイトhttps://www.arcadiamotionpictures.com/films/robot-dreams/

Omen

第67回ロンドン映画祭

10月13日 バロジ監督登壇

ホラー映画オーメンとは無関係のマジックリアリズム映画。

ベルギーから恋人を連れ、故郷であるコンゴに帰った青年が主人公。妻になる人として紹介する恋人への、家族の対応に違和感がある。文化の違いからくる違和感なのか、嫁姑問題みたいな感情的なことなのか、判然としない。生活に呪術が根付いている土地柄と次第にわかってくる中、違和感はさらに増大、現実と夢の区別も定かではないストーリーが展開していく。

コンゴ生まれベルギー育ちのラッパーであるバロジの長編監督デビュー作。カンヌある視点部門ニューボイス賞を受賞している。

公式サイトhttps://www.ayafilms.org/films/omen-augure

Black Dog

第67回ロンドン映画祭 オンライン試写

ロンドンに暮らすティーンエイジャー2人のロードトリップ。

そこそこいい家の子らしい黒人少年と、そうでもなさそうな白人少年が、ちょっとした事件がきっかけで出会う。知り合ううちに、お互い、ロンドンを出て、探したい人がいるとわかり、実行する。

真面目で勉強もできそうな子にストリートの知恵はありそうな子でタイプは違えど、旅するうちに共通項も見つかっていく2人。

そこにあるのが、友情なのか、違った種類の愛情なのか、危ういところもありつつ、その深追いはせず、サラっと流される。いろいろ物足りない感もあるけど、最後まで見せきる面白さはある新人作。

タイトルの黒い犬は、最初はその場で終わりそうなのが、後を引くことになる、旅中の黒い犬にまつわる事故から。

公式サイトhttps://independent-ent.com/production/black-dog

Terrestrial Verses

第67回ロンドン映画祭 オンライン試写

いたるところで締め付けがある日常をオムニバス形式で描くイラン映画。

たとえば、こんな具合。新生児の名前申請に役所を訪れた父親が欧米風の名前を言うと、「イラン人だろ、その名前はダメ」、「妻が好きな作家の名前なんだ」、「お前の好きな作家は?」、「〇×▽※☆~(長い重々しい名前)」、「それにすればいいじゃないか」、「あんたは自分の子を〇×▽※☆~と呼びたいと思うか!」、「お前が言った名前だろ…」。

我が子の名付けにも口出しされるとは人権侵害もいいところだが、これはまだ笑える一例。就職の面接に行った女性がセクハラ以外の何物でもない対応を受けるあたりは、もう笑っていられない。

公式サイトhttps://filmsboutique.com/film/terrestrial-verses/

Molli and Max in the Future

第67回ロンドン映画祭 オンライン試写

SFラブコメ。交通事故(宇宙空間の)で出会った男女の、長い年月を描く。

最初から惹かれあってるふうなのに、モリーはツンデレ、マックスは自分探し中、なかなか進展しない。年月を経て、お互いの状況、立場も変化しつつ、それでも付かず離れずで切れずにいき…という定番ストーリーを、宇宙を舞台に描いたところが新しい。

けっこう笑えて、低予算な感じが染み出すところもご愛敬なインディーズ映画。

公式サイトhttps://www.whiskeybear.com/film-tv

The Rye Horn

第67回ロンドン映画祭 オンライン試写

フランコ体制下のスペイン、家での出産シーンから始まる。いっしょにいた夫や娘が出された部屋で、汗まみれで苦しみの声を上げる母親を、がっちり支える頼もしい助産婦が主人公。

仕事柄か落ち着きがあるが、それほど年配でもなく、30代くらいだろうか、ワンナイトラブがあったりして女盛り。出産シーンといい、ラブシーンといい、生々しい。きれいごとではない女性の性。

新生児を取り上げる一方、秘密裏に行われる堕胎で頼りにされもする。そこから追われる身となった助産婦の逃避行と、その行き着く先が描かれる。

生むのも堕ろすのも命がけ、それを手伝う女性まで追われることになる、女性のみに降りかかる苦しみの理不尽。

公式サイトhttps://filmsboutique.com/film/the-rye-horn/


映画ニュース/インタビュー

シネマトゥデイに書いている映画ニュース/インタビューはYahoo Japanなどに配信されています。

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