2010年10月 のアーカイブ

イケナイと思うのは母性神話のせい?

ゲイ、レズビアンからSM、自慰と性描写もいろいろあれば、殺人、解体、切腹などなどスプラッターなのもいっぱいあったロンドン映画祭。

そういうのは、わりと平気。それ自体が目的ではなく、何かを表わすのに使ってあれば、すんなり見てしまう。反面、すごくイケナイものを見た気になったのがEssential Killing

敵地の中を逃げ惑うタリバン兵士の主人公をヴィンセント・ギャロがセリフもなしに体で表現してる映画だけど、雪道を自転車こいで行く途中に一休みしながら赤ちゃんにお乳をあげてるお母さんを襲うシーンが、殺戮シーンよりショッキングだった。襲うたって、性的な意味じゃなく、飢えた主人公が空いてるお乳を取り出して、むしゃぶりつくんだけど。

胸からちょっと糸を引かせながら、口周り白く乳だらけにしたギャロが顔を離すと、太ったお母さん、あまりのことに気絶したんだか、ショック死したんだか、片乳にまだ赤ん坊を吸いつかせたまま動かなくなってる。

アメリカ兵をドッカンと吹っ飛ばしたり、逃亡中、罪もない民間人のきこりを電動ノコギリで殺したりする方が殺し方としてはひどいのに、もっと悪いことをしているように思えるのは、母性を尊いものと思っているからなのかな?自分でも考察してみたくなる点。

ロンドン映画祭からのお勧め作品その2

50くらい見たと思うロンドン映画祭参加の新作の中から、よかったものをあげてみる昨日の続き。

 

傑作 Another Year/アナザー・イヤー(原題)

公式サイトAnother Year – Film4

ビートルズ派それともストーンズ派?みたいに、イギリスではローチ派それともリー派?ということも言われる2大巨匠。うーむ、どっちも好きだけど、今年の参加作2本に限っていえば、ケン・ローチ監督のRoute Irishよりマイク・リー監督のこっち。サラリとユーモラスに人生の深みを垣間見せる手際が見事。

男性なのに、いつも女性をリアルに描いてみせるリー監督だけど、この映画の初老を迎えようかという独身女性には、まいった。そうそう、女の人ってそうなんだよなーって、悲しくなるくらい。演じるレスリー・マンヴィルも助演女優賞をあげたいくらい上手い。

 

すごい新人 The Arbor/ジ・アーバー(原題)

公式サイトArtangel | Clio Barnard: The Arbor

典型的と呼びたいようなワーキングクラスの家からでて、結婚せずに最初の子を産みパブ通い、死んだのもパブという人生を歩んだ作家アンドレア・ダンバーを、新人のクライオ・バーナード監督が新しい手法で見せる。

ダンバーの家の近所らしい住宅地の野原にリビングセット置いて、そこで一家の物語が進み、それをご近所さんたちが囲んで見てたりする。それが関係者が話すドキュメンタリー部分(と見せて、役者さんだったりする部分もあり)と組み合わされると、両方のリアリティが増して見える。新しい試みをいろいろしてて、はずしてないというのが、すごい新人監督。

 

胸が痛むロストラブストーリー Blue Valentine/ブルー・ヴァレンタイン(原題)

公式サイトBLUE VALENTINE – Official Movie Website

ライアン・ゴズリングの歌とウクレレ(バンジョーかも?)にあわせて、ミシェル・ウィリアムズが路上でちょっと踊るシーンは、出会いの頃のカップルの可愛いシーン1番をあげたいくらいにいい。

そんなにいいカップルなのに、歯車がずれていく(これも生々しく描かれててグッド)のは、あまりに残念で、変わってしまった方、というか、本性(トラウマ?)が出てきた方のミシェル・ウィリアムズに腹立ちさえ覚えてしまった。これ見た人は、きっと、そりゃないぜミシェルと思うはず。

その後にインタビューしたデレク・シアンフランス監督が、映画中の結婚後のゴズリングに似てる気がした。ヘアスタイルとかヒゲとかタトゥーとか、ほぼ同じだったような。自分をモデルにした?夫に共感させるように描かれてるのはそれが理由?

でも構想から今までに結婚して子どもを持ったとは言ってたけど、離婚は言ってなかったし、両親の離婚が動機の1つとも言ってたから、お父さんがモデルで自分もお父さんに似てるだけ?いずれにしても、男性監督が男性側に有利?に作ってる気もする。でも、とってもいいラブストーリー、正確にはロストラブストーリーになるかな、だけど。

ロンドン映画祭からのお勧め作品

昨日で終わったロンドン映画祭、全部で50くらいは見たかなーの新作映画の中から、これはよかった!というものをご紹介していきたい。

一番のお気に入り Neds/ネッズ(原題)

もともとシェーン・メドウズやアンドレア・アーノルドが好きなので、その系統、しかもきわめてよく出来てるこれが個人的には最高賞。ワーキングクラスのタフな少年期が説得力を持って描かれているものにはグッとくる。

監督の自伝的な映画に出来の悪いものはあまりない。独りよがりになってない場合に限ってだけど。個人的なことをちゃんと作品に昇華させるのは、年季入ってるとか、ちゃんとその方面のお勉強してるとか、意外に地道なことのような気もする。そりゃ才能は必要だろうけど。自身の父親のアル中ぶりを演じているほか、監督/脚本も務めたピーター・マランも長い俳優歴、監督歴あっての本作と思う。

オスカー候補 The King’s Speech/ザ・キングズ・スピーチ(原題)

ジェフリー・ラッシュ助演男優賞も有力だし、いろんな部門でノミネートされそうだが、コリン・ファースの主演男優賞を一押し。

一昔前に流行った三高という言葉が浮かぶコリン・ファース。女性が男性に求めるものとしてあげた、高身長、高収入、高学歴という、あれね。

ちょっと見上げるくらいの長身、正確な年収は知らないけど高収入であることは間違いない。大学で教える両親の元に生まれ、本人も世界的に知られたイギリスの芸術大学のドラマコースで学んでいる。三高とは関係ないけど、ついでに奥様も才色兼備。今回のイギリス国王役もピッタリの威風堂々。

それなのにエリートにありがちな冷たい感じがしない、というのがポイント。だいの大人、しかも国王が子どもみたいに泣くようなシーンにも、ちゃんとはまる。これだけ良さが出せる役、売れっ子と言えども、そうは来ないだろうから是非オスカーをあげて欲しい。

ほかにも、いいのがいろいろあったので続きは明日。

えぐくてもフィールグッドな127アワーズとえぐくてフィールバッドでも面白い冷たい熱帯魚

ロンドン映画祭最終日は試写+会見、一般上映で2本

127Hours/127アワーズ(原題)

公式サイトFox Searchlight – 127 Hours – Official Site

自らの腕を切り落として生還した冒険野郎のお話。目、耳、口など押さえつつ見ている女性もいたエグい切り落としシーンながら、人間賛歌、フィールグッドムービーになってるところが、さすがダニー・ボイル監督。鮮やかな画面と音楽も相変わらず冴えてる。面白く見せることにかけては達人だな。

会見では、ジェームズ・フランコが思ったより渋かった。もっと可愛い感じの人かと思ってた。ほとんど1人の芝居を、しっかり見せてて、演技の方もよかった。

冷たい熱帯魚

園子温監督作品「冷たい熱帯魚」公式サイト

ワイドショー大騒ぎだったのを思い出す、実際にあった犬の調教師による殺人事件をベースにしたこちらも、エグさでは負けない。4時間の愛のむきだしをダレルどころかあれよあれよと見せてしまう園子温監督、面白く見せることにかけてもさほどひけをとらないと思う。フィールグッドとは対極の後味の悪い終わりも素敵。ロンドン映画祭では、でんでんが評判よくって、黒沢あすかも褒めてる人が多く、神楽坂恵の胸は本物かと聞かれた。吹越満の普通の真面目ないい人っぽい感じが壊れていくのもよかったと思うけど、上手に普通の日本人らしさを出しても、こちらではあまり気がつかれないんだろうか。

How I Ended This Summer/ハウ・アイ・エンディド・ディス・サマー(英題)

ベルリン映画祭でプレス試写を見逃し、ロシア語をドイツ語字幕で見る一般上映で途中まで見てギブアップしたのを、やっと英語字幕で見られた。観測隊員に送られる通信が大事だったのね。そこがわからずに見たら、全然わかんないものだった。ギブアップしたところまでの画面では、ほのぼの系かと思ってたら、とんでもない。よかった、ちゃんと見られて。

前年にもプレス試写を見逃し、フランス語をドイツ語字幕で見る経験をしたリッキーは、ほとんどセリフがわからずに見ても、ストーリーがわかったし、ちゃんと面白かった。だからと言ってリッキーがいい映画で、How I ~がだめということでは全然なくて、どっちもいい。映画の面白さって、ほんとに、いろいろ。

しゃべらなくても凄いギャロ

ロンドン映画祭、試写後、一般上映2本

Somewhere/サムウェア(原題)

公式サイトS O M E W H E R E

ソフィア・コッポラ監督の金獅子賞受賞作。わけもわからなく動かされてるような俳優の主人公とか、出世作のロスト・イン・トランスレーションと似てるとこもあるけど、終わり方は明るい。絵的に上手い構成で見せるのは、昨年の同賞受賞作レバノンもそうだった。金獅子賞はそのへんに重点を置いて選んでる?

Essential Killing/エッセンシャル・キリング(原題)

主人公の追われるタリバン役のヴィンセント・ギャロ、一言も発しなかったんじゃないかな。うめいたりはするけど。それで、ずっと引きつけるのは、たいしたものだ。あいさつにたったイエジー・スコリモフスキ監督が自信満々だったのも納得。

The Sleeping Beauty/ザ・スリーピング・ビューティー(原題)

眠れる森の美女に氷の女王が混ざって、最後はレズビアン・シーンも混ぜつつティーンエージャーの早すぎる妊娠という問題で終わる。途中、眠くなったし、ヘンテコさが必ずしも効いてないようにも思うけど、印象的ではある。あれ?と調べたら、やっぱり前にも見てたカトリーヌ・ブレイヤという監督だった。Bluebeardという作品を見て、同じ感想を持ったんだった。女性のセクシャリティを昔話をかりて表わす作風なのね。

禁断メルヘン 眠れる森の美女という邦題で2012年日本公開のようです。(2011年12月5日追記)

成功する俳優、監督には可哀想な子が多いのか?

ロンドン映画祭、試写+会見、一般上映+Q&A

The First Grader/ザ・ファースト・グレーダー(原題)

公式サイトThe Movie – The First Grader

84歳で小学校に入学して勉強を始めたケニアの元戦士キマニ・マルゲの実話。世の中には、すごい話が、いっぱいあるんだなあ。主役のマルゲを演じたオリヴァー・リトンドという人は、84歳よりは若いみたい。そりゃそうか。

その後、おじいさんと草原の小学校という邦題で7月30日から日本公開決定。(2011年4月11日追記)

Abel/アベル(原題)

公式サイトAbel | INICIO

ディエゴ・ルナの初長編監督作。少年を主人公にした家族のお話。父親が出て行ったショックで精神的にダメージを受けちゃった可哀想な男の子だけど、コメディタッチで笑いながら見られる。

こないだのピーター・マラン監督のNedsに続いて、ディエゴもこんなひどいお父さんを持ってたのか、いい監督/俳優には、ひどい父親は不可欠?と思ったら、そうじゃなくて、子どもを持ったディエゴがこんな父親にはなりたくないというものを描いたというので一安心。でも2歳で母親を亡くしてるそうで、それはそれで可哀想。

イタリアの熱い人とヘビメタの熱い人

ロンドン映画祭、試写、インタビュー

 

Draquila-Italy Trembles/ドラクイラ-イタリー・トレンブルズ(英題)

公式サイトDraquila-L’Italia che trema. Il nuovo film di Sabina Guzzanti

イタリアの地震の際の政府の対応を追いながらベルルスコーニ政権の腐敗をあぶりだすドキュメンタリー。お金が身内に回るようにしたり、女性スキャンダルの数々など、悪代官かと思うような、わかりやすく悪いことをいっぱいしてる首相なのね。

インタビューの1人目がこの映画の監督のサビーナ・グッザンティ。バサバサの髪を束ねただけでスウェットみたいな楽な格好だったけど、華やかな感じ。さすが女優さん。

 

次のインタビューが17日に古き良きロックンロールオヤジとして書いた極悪レミーのグレッグ・オリヴァー/ウェス・オーショスキー監督。やっぱりレミー・ファン。画面に愛が見えるもの。カメラを向けると、ちゃんとヘビメタっぽくポーズを決めてくれた。

こないだは英語のサイトしかなかったけど、今見たら、日本語サイトもできてた。極悪レミー [Lemmy the movie] オフィシャルWebサイト

 

ロンドン発 俳優・映画情報、11月5日公開のノーウェアボーイについて、母恋いジョン・レノンと題して書いたものがあがりましたので、よろしく。ハンガーのスティーブ・マックィーン監督に続いて、ウワオ!と思ったイギリスのアート界出身監督のサム・テイラー=ウッドの長編デビュー作。デビュー作というのは、その人のそれまでのいろいろが詰まってて面白い。

イエイ、得しちゃったーかな?

ロンドン映画祭、一般上映2本とトークショー

Route Irish/ルート・アイリッシュ(原題)

友人の戦死からアフガニスタンでのひどい出来事をあばこうとする男の物語。悪くないが、ケン・ローチ監督新作ということで期待したほどでもない。昨年のレバノンみたいに体験者しか知りえないリアルさで見せたり、マイ・ブラザーみたいに家族の物語とオーバーラップしたりとか、なんかないと、戦場でどんな不正があっても、それだけでは今更驚かない。ドキュメンタリーなら、それもありだけど。すれっからしになってるんだろうか。


オリヴィエ・アサヤス・トーク

Carlosの監督。飛行機の遅れで、開始が30分遅れた短縮版となる。おかげで、トーク会場の全員にCarlosDVDがプレゼントされることに!イエイ!見逃してたから助かった。後から送ってよこすというのがちょっと不安だけど。


Mandelson: The Real PM?/マンデルソン:ザ・リアルPM?(原題)

大臣など歴任したピーター・マンデルソンのドキュメンタリー。Q&Aに本人も登場。さすがに受け答えがシャープ。

オスカー狙えそうなザ・キングズ・スピーチと、三池らしいエグイとこもありの十三人の刺客

ロンドン映画祭、一般上映で2本見る。

The King’s Speech/ザ・キングズ・スピーチ(原題)

一昨日のプレス試写が満員で見られず、昨日の一般上映も同様に満員で、やっと今日のチケットゲット。昨日のは、一昨日見られなかったプレスが流れたんだろうけど、いずれにしても注目作。

今のエリザベス女王の父親にあたるジョージ6世の吃音との戦いのお話。コリン・ファースは無理なくキングをやれる育ちのいい雰囲気を持ちつつ、吃音の原因ともなっている子どもの頃のトラウマを感じさせるような人間くささもちゃんと出せてるとこがいい。昨年シングル・マンでノミネートだけで逃してるし、コリン・ファースにオスカーあげてもいいと思う。

主治医役のジェフリー・ラッシュも相変わらずいいし、ジョージの妻役のヘレナ・ボナム・カーターも、人気のあるクイーン・マザー、実際にこんな人だったら、そりゃ人気も出るよという感じにいい。こちらの2人が助演でオスカーもありかも。衣装や音楽、脚本とか、いろいろな分野でオスカー狙えそう。

十三人の刺客

公式サイト 十三人の刺客

三池崇史によるエンターティメント大作。しっかり楽しませてもらった。意外だったのがスマップの稲垣吾郎。血も涙もない役がピッタリ。ふーむ、そういうのがハマル人だったんだ。一般上映だと、観客の反応も面白い。戦う前に名乗りをあげたり、切った後、ぐっと顔を作って、ためる演技みたいな感じのとこで笑うんだな、これが。歌舞伎なら何とか屋ーとか掛け声がかかりそうなとこだけど。腹切りや、スパッと首が切れてころがったりするのでも、うけてる人がいた。有り得ないと思うんだろうか。

激しいブラック・スワン

ロンドン映画祭 試写+会見

Black Swan/ブラック・スワン(原題)

公式サイトFox Searchlight – Black Swan – Official Site

残念ながら会見にナタリー・ポートマンは不参加。ヴァンサン・カッセルが面白かったし、ミラ・クニスも綺麗だったから、まあいっか。

なかなか激しい映画。さすがレスラー スペシャル・エディション [DVD]""レスラーのダーレン・アルノフスキー監督。

これでポートマン、オスカーとったりするんだろうか?あまり、とらせたくない気もするのはなぜだろう?まだ、若いせいもあるな。でも、それだけじゃない。ウーン、何だろう?レズビアンシーンあり、オナニーシーンあり、そのほかきわどいシーンがいっぱいで、体当たりの演技とか言われそうなとこがいやなのかも。そういうの違う気がする。確かに迫真の演技ではあるからノミネートくらいならいいけど。


映画ニュース/インタビュー

シネマトゥデイに書いている映画ニュース/インタビューはYahoo Japanなどに配信されています。

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